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VICE 一鬼のこドキュメンタリー

VICEのドキュメンタリービデオに出演しました。
岩を縛り完成するまで、そして他に一鬼のこの活動についてなど。再生回数は、50万回に至る。

VICEとは

世界30ヵ国以上に支部を持つメディア・カンパニーのVICEは、メディアを通じて若年層向けにグローバルなサービスを提供。世界中で制作・厳選されたプレミアムなコンテンツは毎日、5,000万人以上の人々に向けて配信されている。1994年創刊のフリーマガジン「VICE Magazine」を皮切りに、ウェブサイト「vice.com」、オンライン映像、書籍、音楽、映画など、既存の枠にとらわれない活動を展開し続けています

ドキュメンタリービデオ『縄師』

ドキュメンタリービデオ『縄師』

2008年制作。映画制作会社ジョリーロジャーから発売された一 鬼のこと縄師の世界を追ったドキュメンタリービデオです。渋谷UPLINKにてトークショーを含めた試写会を行い、その後、全国のTUTAYAにてレンタルされました。

WITHNEWS記事「岩も気持ちよくさせたい」

オリジナル記事はこちら ▶

「岩も気持ち良くさせたい」 異能の緊縛師、一鬼のこが語る縄の極意

「緊縛」という言葉の響きから、何を思い浮かべますか。変態、怖い、気持ち悪い…。何となく近寄りがたい印象を持っている人も多いかもしれません。そんなイメージを覆すような活動を展開しているのが、緊縛師の一鬼のこさんです。岩を縛ったり、光る縄でパフォーマンスをしたり。芸術性の高い作品は、海外でも注目を集めています。「アートとしての縛りを確立したい」という鬼のこさんに、縄の極意を聞きました。

「毎回60人ぐらいの生徒さんがいらっしゃいます」

――現在の活動について教えてください。

月2回、東京・新大久保のスタジオで、「一縄教室」という縄の教室を開いています。縛りのテクニックやモデルとの接し方、事故時の対応などを教えていて、平均60人ぐらいの生徒さんがいらっしゃいます。3分の1ぐらいが海外の方で、日本在住の人もいれば、観光で来ている人もいますね。特にヨーロッパの方が多いです。

自宅兼スタジオでのプライベートレッスンも行っています。1時間1万円ほどですが、それでも海外のお客さんのなかには5時間、6時間取ってほしいという方もいます。海外でも「ジャパニーズ・ボンデージ」「SHIBARI」「KINBAKU」と呼ばれているぐらいで、縄の世界における日本は、サッカーでいうブラジル並みに存在感があるんです。

――ひと口に緊縛・縛りと言っても、様々な種類があるそうですね。

ショーなどパフォーマンスで魅せる縛りでは、客を飽きさせず、スピードに緩急をつけることが大切です。野球でもチェンジアップの後の直球は早く見えますよね。あれと一緒です。大きな会場では、光る縄を使うとか、天井まで吊り上げるような派手な演出も必要になってきます。

ほかにもプレイのための「プレイ縄」、マゾヒストさんのための「攻め縄」など色々ありますが、最近注目されているのが「コミュニケーション縄」です。文字どおり、コミュニケーションの一環として縛っていく。

僕の場合はまず、相手のいいところを思い浮かべ、後からハグするところから始めます。そこから、相手のタイミングで縛っていく。相手を知ろうと努力することで、「自分を理解しようとしてくれているんだな」という風に気持ちが伝わって、心が開く。ふっと力が抜けた瞬間に縛るんです。

「縄は手の延長です」

――縄を通じたコミュニケーション、ですか。

縄は手の延長です。お箸やボールペンを使っていても、触れているものの柔らかさや堅さはわかりますよね。縄も同じで、呼吸や鼓動を感じることができる。汗をかいているな、肌が乾燥しているな、といったことが伝わってくるんです。

人によってタイミングや緊張度は違いますし、場所の影響もある。寂しい気持ちなのか、楽しいと思っているのか、エロい気分なのか、その時の心境によってかける縄も変わってきます。

やみくもに荒々しく縛るのと、優しい縛り方をわかったうえであえて荒々しく縛るのとでは全然違う。相手が欲しいタイミングで、欲しい場所を、欲しい強さで縛っていく。それこそがコミュニケーションの縄であり、究極の縄です。

――縛られた側はどうなっていくのでしょうか。

「縄酔い」という言葉があります。縛られると脳内物質が分泌されて、ランナーズハイのような状態になります。僕は女性をメインに縛っていますが、女性が嫌うのが「管理されていない痛み」です。肉が挟まったとか、骨が当たったとか、そういうことがあると冷めちゃうんですね。逆に、「管理された痛み」に対しては陶酔して、気持ちよくなっていく。

縄には、人を落ち着かせる効果もあります。縛ることで逆に心がほどけ、楽になっていく。縛られる人の気持ちを理解するために、僕自身、年に数回練習で縛られてみるのですが、たいてい眠たくなって寝てしまいます。知人の女王様も「M男さんで寝る人はいっぱいいる」と言っていました。

「岩も気持ち良くさせたい」

――岩などの自然を縛る活動もされています。

自然も人だと思って縛っています。自分のやりたいように縛るのですはなく、相手の反応を見ながら縛っていく。コミュニケーション縄ですね。

自然に勝るアートはありません。岸壁が波に削られていくように、岩にも(縄が)通るべき場所があるんです。岩にとって必要のない縄がかかっているようではダメ。表面のコケにダメージがないよう、最初からピンと張った状態で注意深く縄を置いていきます。

やっぱり、岩も気持ち良くさせたい。ここは首かな、股かな、どこら辺が気持ちいいのかな、と考えながら縛っていきます。縄でハグしてあげるような感覚です。

「整体の知識は、今も役に立ってますね」

――どういう経緯で緊縛師になったのですか。

愛知県東海市の名和(なわ)町出身で、本籍は名古屋市南区の柴田というところです。しばた、しばった、縛った…っていう。運命的なものがあったりするのかな、なんて思ってます。小さい頃から手先は器用で、図工が得意でした。

高校を卒業した後はカイロプラクティックや整体の学校に行って、人体のことを勉強しました。骨をこれ以上動かすと体が壊れるとか、腱や筋肉がどう通っているのかとか、ケガをしたらどうするかとか。その時得た知識は、今も役に立ってますね。

――いつ頃、縛りに開眼したのですか。

色々と転々として、東京に出て来て。22、23歳の頃かな。ひょんなことから、六本木でSMバーの店長をやることになったんです。「前の人がやめたから、やってくれ」と言われて。それでほかのお店に勉強しに行った時に、あるMの女の子と出会いました。その子のことを好きになって、つき合うことになったんです。

SMがすごく好きな子で、デートをしている時に「私、彼氏彼女の関係より、ご主人様と奴隷の関係の方が深いと思うんだよね」と言われました。自分は2番手で、「アンタよりも関係の深い人がいる」と言われている気がして…。僕も負けず嫌いなので、そこからSMをしっかり勉強しようと決意しました。で、ひと通りのことをやってみて、1番しっくり来たのが縄だったんです。女の人のきれいな肌に、ラインが通っていくのが美しいなって。

後から知ったんですけど、その女性は自分にそうしてほしくて、わざと気を引くような言い方をしたみたいです。すっかり手のひらで転がされていた。今でも感謝してますね。

「普通の人にも楽しんでもらいたい」

――教室以外にも、写真集を出すなど多彩な活動を展開していますね。

CDジャケットなどポップなものを手がけることもありますし、アート作品も発表しています。昨秋、東京の神保町画廊で5日間の写真展を開いて、約3千人の方にお越しいただきました。一般の人が縛りの世界に入りやすいよう、昨年末には「現代緊縛入門」という教則DVDを出しました。緊縛デザインの女性用タイツも出していて、非常に人気があります。

「緊縛」って言葉を検索すると、ハードな写真がバーッと出てくる。「怖い」と感じる人も多いと思います。でも僕は普通の人にも緊縛の良さを知ってほしいし、楽しんでもらいたいんです。岩を縛ったり、縄が光るパフォーマンスをしたりするのも、若い人たちに入りやすくしたいから。「監禁」「虐待」といったことを連想する人もいるかもしれませんが、僕がやりたいことは、そういうものとは全然違います。

――海外でも精力的に活動されています。

イギリス、フランス、スペイン、イタリア、ロシア、オーストラリア、台湾など各国でショーや教室をやってきました。生徒さんの許可をいただいて、海外での教室の様子をフェイスブックなどに投稿しているのですが、5年前は30人のうち27人に「顔出しはダメ」と言われました。それがいまでは、30人のうちNGが3人だけという感じで逆転してきた。縛りのアート性が認められてきているのだと思います。

近年、アラーキー(荒木経惟)さんがレディー・ガガの緊縛写真を撮ったり、マドンナがアルバムジャケットに縛りの要素を入れてきたりと、ファッションやアートとしての縛りが広がりをみせています。シャネルも平井堅さんや水原希子さんの縛りの写真を公開していますね。そうした状況も影響しているのではないでしょうか。

「日本のエロス、縛りによく合う」

――日本の緊縛文化が海外から高く評価されるのはなぜなのでしょう。

やはり日本人の繊細な気質が大きいですね。わびさびを大切にし、恥じらいの文化がある。開けっ広げな欧米に対して、日本人は着物のすそから少しだけのぞいた内ももにエロスを感じる。うなじ、吐息、唇をかむしぐさ。そんなエロスが縛りによく合うんです。

――最後に、今後の抱負をお聞かせください。

アートとしての縛りを確立したい。世界ではかなり認められてきましたが、日本ではまだまだ偏見がある気がします。日本でも多くの人に縛りを知ってもらいたいですね。


〈はじめ・きのこ〉 1977年、愛知県生まれ。緊縛師、ロープアーティスト、フォトグラファー。縛りからカメラ、演出までを手がける。写真集『ナワナノ』(三和出版)、教則DVD「現代緊縛入門」など。3月に写真集『Red』(マイウェイ出版)を発売、展示イベントを開催予定。

一鬼のこ個展回想

相馬(以降「相」):唐突で申し訳ありませんが、一さん、ハンス・ベルメールってご存じですか?

一鬼のこ(以降「一」):この間、調べましたね。

相:シュルレアリズム周辺で活動した、エロティックアートの重要人物の一人なんですけどね。基本は版画なんですけどね。

一:版画家なんですね。なんかいろいろと出てきたので。

相:人形も作ってて、今の日本の人形作家にも影響を与えてます。
それで、ベルメールには恋人のウニカ・チュルンという女性画家(詩人)がいまして、その人の緊縛写真も撮ってるんですね。それが、第一印象では、非常に犯罪的なきつい縛りで。
一つにはもの凄くサディスティックな印象があるっていうことと、もう一つは、写真で顔とかをカットしたりして、縛り上げているのが女性の肉だけという感じでなんです。
ところが、最近の研究者でシューテイラーという人がいて、その人が「実はそういう犯罪的なものだけじゃないんじゃないか?」っていう意見を出しまして。どういうものかというと、当時のベルメールは恋人のウニカ・チュルンが精神分裂病で入退院を繰り返してて、お母さんが危篤だったんですね。それで親密な女性をつなぎとめておきたいという無意識的な願望もあって、急にそういう縛る写真を撮ったり、縛る絵を描き始めたという側面も考慮しなければならないんじゃないかという…

一:そうなんですね。

相:そうなんです。で、私もそういう無意識の願望は、ベルメールにかぎらず、緊縛一般にも潜んでいるんじゃないかと思いましてね。
どういう事かと言うと、絆としてね、縄で縛ることによって、自分の側に置いておきたいっていう、そういうような意味もあるじゃないかっていう。つまり、その場合の縄っていうのは、お母さんであったり、母性的な恋人だったりっていうのがあって、まあ、やはりその女性との絆なんですけど、もっと具体的に言っちゃうと、臍の緒なんじゃないかって。緊縛には臍の緒としての縄っていう隠れた意味もあるんじゃないかと。
やっぱり、私などがSMの写真を見ると、やっぱり女性を、言い方は悪いけど、いたぶるというか、そうすることによって性的な感情を高めていくという風に見えちゃうわけなんですけどね。でも、ただそれだけじゃなくて、緊縛することによって、自分の側に置いておいて、絆を深めていきたいという…
なんでこの話をしたかっていうと、一さんのこの文章(神保町画廊での個展の文)を読んだ時に、一さんも似たようなことを考えているのかなと思ったんですよ。絆だってことを書いていて、それがやっぱりこの間の個展を見たときに、一番強く感じたことなんですね。   
一般的な緊縛とは違って、もの凄く絆っていうのを重視してるっていうのが一つと、もう一つは緊縛なさっているときの細やかさですね。細やかさっていうのは、他の緊縛師の方々も、日本の緊縛の方って上手い人が多いんでしょうから、細やかだと思うんです。
でも、どうしても先に僕が感じるイメージというのは、女性に対する攻撃衝動だったりっていうのがあって、細やかさまで目がいかないことも多々あるんです。今回の一さんの個展は、もの凄くその絆と細やかさがストレートに伝わってくるような感じだったと思うんですね。やっぱりそこを強調することによって、ちょっと暖かみみたいなものを受けたんですね、感じとして。そこの二点において。やっぱりちょっと一さんが緊縛っていう今までのイメージと違うことをやろうとしているのかなというのが私の個展の感想ですね。
普通のアダルトメディアで出してる緊縛というのは、絆とかってあまり言わないと思うんですよね。だから、面白いテーマを出されたなっていう風に思って。この個展のテーマである絆からお話を始めたいなと思って、僕の感想を先に言ったんですが。

一:はい、そうですね。僕が初めて縛った時、十五年くらい前ですが、フェティッシュなバーを六本木でやろうと思ったんですね。僕自体がそういった知識とか、もう一般人だったので、SM的な思考も全くなかったんですよ。
その時に、他のSMバーに勉強しに行って、そこで出会った女性がいたんですけども。その女性と付き合うことになって、彼女からご主人様と奴隷の関係が俗に言う彼氏彼女の関係より深いって言われて、それがきっかけとなってSMっていうのを勉強して、一通りやってみたんですよ。SMプレイっていうのを。だけど、どうも僕、そういった思考がないのかしっくりこなかったんですね。それで唯一良いなって思ったのが縛りで、すごく良いなって思ったんですね。やっぱりエロスも感じたし、美しいとも感じたし、それよりも何よりも、なんか縛ってる時につながりをすごく感じたんです。
やっぱり人間のするコミュニケーションっていうのは会話じゃないですか、会話で話してるのって嘘ついても騙しちゃったりとか出来るじゃないですか。でも、手つきだったりとか、触れていくものとかって、結構嘘つけないんですよね。やっぱり嫌いな人を触ったりしたら嫌いな触り方になるし、好きな人を触ると、好きな人の触り方になるし、エロいことを考えたらやっぱりエロい手つきになったりするんですよね。だから、本当の意味での繋がりだなって思ったんですね。だから、緊縛に対する捉え方っていうのはやっぱり僕はつながりというか、コミュニケーションだったりとか、そういうことだったんで、捕らえるとか押さえつけるっていう意味合いじゃないんです。

相:なるほど。確かに、一さんのおっしゃるとおり、言葉だと距離を置いているから、操作も出来るし、それが嘘であったりとか、そういうことで操作できるんだけど、触れたりする時っていうのは、そういうものを無くされますもんね。

一:無くされそうですね。
そっから、繋がりっていうのをやっぱり感じて、あとは僕は縛りっていうものに対して、素晴らしいなって思ったんですよ。ただ同時に自分自身が勘違いしていたところがあるんですけど。
素晴らしいな思ってるのを、他の人も素晴らしいなって思ってると思い込んでて、ある日高円寺で文房具屋で文房具を買う時に、レジ打ちしてた女の子が可愛かったんですよ。で、ちょっと声かけようかなって思って、縛り師の名刺を渡したんですよ、すっごいどんびかれて。

(一同笑い)

一:ああ、やっぱり一般の人達ってすごい偏見とか、変な、縛りに対しておどろおどろしいものというか、そういうものを持っていて、なんて失礼な奴らだと思って。なんていうんですかね、やっぱり一般の人達に、縛りは凄く好きだったんで、好きな物に対して、やっぱり好きって思って欲しいんですね。だから、一般人の人達に分かりやすい形で表現していきたいなって思ったんですよ。
やっぱり、僕が一番最初に感じたものっていうのは正解だと思うんで、つながりを表そうと思って、そこで赤い縄を使ったんですよ。赤い縄っていうのは、血にも見えるし、血っていうのはすごいつながりがあるふうに感じるんですよね。

相:そうですね。

一:あとは運命の赤い糸っていうじゃないですか。だから、赤い縄を使って。で、今度赤い物が鮮明に飛び込んでくる対比になるカラーって何かなって思った時に、黒もいいんですけど、黒だとやっぱりおどろおどろしいイメージになっちゃうので。

相:なっちゃいますね。

一:白色っていうのか、すごくさっぱりした色に見えて、脳にすごく飛び込んでくるんですよね。で、そこで表現していこうかなって、やっぱり言われてた、一番最初に表現したのが、僕自体が母ちゃんがものすごく大好きで、マザコンなところがあるんで。

相:ああ、やっぱりマザコンでしたか。

一:もう大好きですね。で、一番最初に再現したのは、やはり臍の緒でした。

相:そうだったんですね。

一:はい、まあ、僕がその時撮ってる作品じゃないんですけど。やっぱりね、そうなってましたね。

相:さっき言い忘れちゃったんですけど、やっぱりこの赤っていうのがものすごく重要だなって思って、まさにおっしゃる通りで血なんですが、血というのはつながりを象徴しますよね。でも、もし一緒に黒とか別のダークな色を持ってくると、血というのは逆にちょっと暗黒的な意味を持ってくるというか、ちょっとデカダンな意味を持ってきて、違うことになると思うんですよ。
でも、一さんのこの作品の中で、赤っていうのを活かしているのは白だと思って、それによってものすごく赤というのがポジティブな意味を持ってますよね。

一:そうですね。

相:だから、繋がりというのがすごく強調されてるというか、それがもしかしたら僕がさっき感想を言った、暖かみっていうんですかね、それに繋がってくる。なんかね、全体的なイメージとして、さっき自分はマザコンでって告白されましたけど、なんかこう母性的なイメージっていうのがありますよね。女神的といってもよいかのかな…

一:そうですね、僕はちょっとフェミニストなところもちょっとあるんで。

相:それも何となく感じますね。

【自らを無化し、受信機と化す】

一:僕、SM的な事をする時っていうのは、やっぱり相手がどこか望んでないと出来ないんですね。やっぱし、人によって場面によって、なんか縛り方っていうのは変えてきてるところがあって、それが大きい枠で捉えたのが、こういう事っていうか、例えば小さい枠で話をすると、普通に女の写真があるときに、僕は一番美しいなと思う縛りとかって、例えばジャンルでいうと日本的な縛り方だとかヨーロピアンな縛り方とか色々ありますけど、それとは別に普通にそういう枠に囚われずに、相手の事を繋がる瞬間があるんですね。縛ってる時とかって、その時に相手が欲しいタイミングみたいなものなんですね。
それが呼吸のタイミングなのか、心臓の脈拍のタイミングなのか、彼女の気持ちのタイミングなのかは分からないんですけど、その縄をかけて欲しいタイミングっていうのがあって、それに対して縄を掛けてあげるんですよね。どういう所を縛って欲しいのかなとか、そういうのをくみ取りながら、縛って欲しい場所がやっぱりあるんですよ。
 縄って言うのは抱きしめる行為でもあるんで、どういう風に抱きしめて欲しいのかっていうのがあって、それを感じてそのまま縛っていくんですよ。自然に終わった時の、彼女だけのラインがあったりするので、僕はやっぱりそういうのが好きでやってますね。それっていうのは、自分が「こういう風にしたい」というんじゃなくて、僕が二次的なものになって、相手の持っているものとか、欲しいものに対しての判読する役割だけに徹したときに、やっぱり一番美しい縛りになったとか。自然物も縛ったりするんですけど、なんか聞こうとしますから、やっぱり相手主体というか。
こっちはどっちかというと、そういう縛り方ですね。だから、自分のフェミニズムというか、相手主体というか、相手が喜んでいないと出来ないっていうのもあるし。SMも相手が欲してないとしないっていう、フェミニズムに繋がるところもあるっていうところにさっき繋ごうとしてました。

相:なるほど。結局のところ、自分っていうのを無化するというか、自分っていうのを消すってことに向かうわけですね。相手の欲望というのを受ける受信機になろうとするわけですね。それは、大事なことだと私も思います。

一:そういう考えなんですね。

相:そうすると、自分がやりたいっていうことを超えるような驚きとかがあるでしょう。だから、一さんが縛る時にも、自分自身を受信機にまで無化していくと、やっぱり自分が思っている縛りのイメージというのを超えちゃうことになると思うんですよ。

一:ああ、超えますね。

相:でも、そういう縛り方っていうのは、あまりしてる方っていないと思うんですが…やっぱりどうしても自分が縛りたかったり、自分の欲望を優先させちゃうじゃないですか。

一:そうですね。なんか最近、僕、海外に教えに行ってる時に、日本の人ってほとんどそういう縛り方って見たことなかったんですけど、海外の人でね、やっぱりやってる人いるんですね。やってる人というか、この人自分の縛りに近いって人います。

相:ああ、そうなんだ。

一:はい、まあ、なんか最近出来てきたんですかね。昔の人達ってSMからの縛りっていうのが大体、そういうルートを辿ってる人が多いんですけど。
今ってなんか、直接的に縛ってみたいって感じで縄だけに興味持って始める人とかもいて。多分、なんか僕もそんな感じだったんで、そういう人とかと同じのを辿ってますね。

相:じゃあ、ちょっとスタンスが似ているような人が。

一:スタンス似ている人がいますね。コネクション縛りって言ってましたね。だから相手を感じ取って、恋人とイチャイチャするような感じの風にも見れます。SMじゃないのを、そういうのをやってましたね。
愛撫の一種というか、そういう感じで、やってましたね。

相:でも、その一方で難しいじゃないですか。さっきね、一さんがおっしゃったように、相手が縛られたい瞬間っていうのをしっかりと捉えないといけないワケじゃないですか。それと同時にどこを縛って欲しいかっていうのも、一さんは感じ取らないといけないんですよね。それって多分、なかなかできないと思うし、やっぱりそれを一さんは鍛えてると思うんですね。
そういうお相手との関係の中で、例えば取り逃がしちゃう事とかってありません?「ああ、今回の縛りはちょっとタイミング外したな」っていうみたいな。

一:ああ、あります、あります。そんなの失敗の連続でした、やっぱし。昔から、そうですね相手主体ですね。なんか、そういう気質というか…
やっぱり相手がいて、自分がいるっていうのもあるし、人がいないとやっぱし楽しくないんで。寂しがり屋なところもありますけどね、自分が寂しくないように、人が自分の周りに居やすいようにしてるのかもしれないですよね。そういう風にして。

相:それが縛る時にも、影響して出てるってことですよね。

一:出てたりとか、はい。

【特殊モデル七菜乃とのコラボについて】

相:じゃあ、ちょっとね、一さんの縛りの本質的なことを訊けたと思ったんで、その時にやっぱり相手が大事じゃないですか。大事だっていう時に、最近、よくコラボレーションしてる七菜乃さん。彼女の魅力というか…一緒にDVDをやったり、これが最初(*インソムニア・ボンデージ)ですか? 作品としては?

一:えっとですね、DVDや作品、動画はそうですね。

相:他には、写真の作品とかではもっと前からやってた?

一:この写真が(いちぶで 00:26:29(?))

相:あ、そうか、こっちの方が先ですもんね。

一:一番最初の七菜乃ちゃんとの出会いって、(ヒヅキイツカ)ちゃんって女の子がいて、その子が僕が昔やってたバーの方に遊びに来て、それで縛ってもらえませんかって言われたので、縛ってあげた時に「私、七菜乃さんって人が好きで、その人みたいになりたくて、こういうフェティッシュなこととかどんどんやっていきたいんだ」っていうのを言ってて、そこで七菜乃ちゃんって人がいるんだってことを知って。
フェイスブックで見つけて、友達申請したのかな? それでちょいちょい見て「ああ、なんか綺麗な子だなぁ」って。無機質な感じ、村田兼一さんの作品って結構人形っぽい無機質な感じが凄くしたんで、それで自分の作品でモデルやって欲しいなって思ったんですね。
僕の作品とかってモデルさんに無機質になってくれって、地球外生命体だったり、どうとでも取れるような感じになってくれていい。とにかく自分を出さないでくれっていう風だったんですね。見た人がいろんな風に取れたりとか、その時の気持ちによって変わったりとか、その人自体が、なんかその人自体のことを思い出せるようにしたいんですね。これ見て、その人に対して「なんだろう?」って興味を持つんじゃなくて、自分に対して、見てる人が見てる人に対して興味を持って欲しいからっていうのがあって。で、「あ、ぴったりだな」って思ったんですね。

相:つまり、モデルさんというのが、あまりにも強く出し過ぎて、見る方が見方を固定されるようなことを避けたいってことですよね。

一:そうです、そうです。

相:見方を固定せずに、色んな見方を選択できるようにしたいってことなんですね。

一:そうです、そうです、そうしたかったんです。まぁ、七菜乃ちゃんにはそういう魅力があるなって。そしたら、なんか撮影会があって縛り師としてきてくれって依頼があったんですよ。縛りに対して興味がない子とか経験がない子とか超当たり障りなく百回やって百回、悪い気持ちにならないように縛るんですよ。なんか結局思ってもらおうとしたら絶対にリスクが出てくるんですよ、縛りって。で、嫌われる可能性が出てくる。
だけど一番最初に縛る時っていうのは、縛るのって二回目から意味があって、一番最初はやっぱり心を開かせる行為ていう順序があって、彼女も良かったと思ってくれたらしくてケータイで写真撮っていい?って言ったら、いいよって言われたんで写真撮ったんですよ。
で、なんか写真撮った時にすごい惹かれるものがあるなって、彼女自体にやっぱりすごく魅力があったんでしょうね。ファインダー越しに彼女の目を見たときに吸い込まれるような感じがあって「あぁ、この子こんなに自分を持っているのに逆のことができる」っていうのが僕とすごい似てるところがあたんですよね。

相:なるほどね。

一:凄い、出せるからこそ凄い、殺せることもできるし。

相:そうですね。

一:撮りたいと思って撮らしてもらったんですけど、最初に縛っている時になんか伝わって来るんですよ。僕も嘘つけないけど、向こうも嘘つけない。僕の手つきだけ相手に対して嘘つけないんじゃなくて、相手の反応とかそういうので普通の人が会話で気づかない所まで気づいたりすることってあるんですよね。
そのあにでファインダー越しに覗くときって普通のカメラマンと違う見方してると思うんですよね。すごい引き込まれていくんですよね。無機質にやっているにも関わらず。で気付いたら顔ばっかり撮るようになっちゃってて「あー、いかんな」と思って引きに戻して撮ったりして、もうそっからですよ七ちゃんの繋がりって一番長くなりましたけどね。

相:一番最初に一さんが求めたのは無機質というもので、七菜乃さんの無機質になる技術っていうはたしかに長けてますよね。

一:長けてますね。

相:本当はさっきおっしゃたように強い自分ていうのがあるんだろうけれども、それがあるがゆえに技術として無機質という感じを出せるっていうか、そういうのを持ってますよね。

一:持ってますね、彼女は。
彼女自身がすごい強いから強いがゆえになんか色々あったかもしれませんね。自分を殺す術っていうのが…そういうのがなんか…すごい感じますよね。

相:一さんは最初その無機質な七菜乃さんを求めたわけだけども、後でこう時間を重ねていくと、別の七菜乃さんというのも出てくるでしょう。そういう、どんどん変わっていくっていう魅力もありませんか。

一:ありますね。僕も最初見せてくれた事の無い顔とか出てきてくれたりとか、また今年と来年とを見ると変わってくる。七菜乃ちゃんの作品を見た時になんていうかな、撮っている人と距離感があるんですよね。それが彼女の魅力でもあるんですが、魅力を崩すことになるかもしれないんですが、僕は距離感を詰めていきたいなと。

相:つまり他のカメラマンか持っている距離感とは…

一:違う。カメラの技術は別に何年もやっているわけではないですし技術自体はプロの人から見たら「なんだよ、お前」っていうものもあると思うんですよね。
だけど接し方というかコミュニケーションのとり方っていうのは自分自身のオリジナルのものなので、他の人が撮れない写真っていうのを撮れたらとか、出せない顔を出せたりすると思うんで自分なりのエッセンスで彼女を撮りながら作品とか作ったりしたいなと思いますね。

相:一さんの場合は縛ったりしてというのもあるから、そちら側からのエッセンスも取り入れてってことですね。

一:そうです。

相:後もう一つ、一さんがこうやって無機質な七菜乃さんを縛る時にまたちょっとそれとは違うような彼女の何かが一さんの心に入ってくることもありますよね。

一:はい。

相:それって七菜乃さんの方もあるんじゃないですか? 一さんというのをちょっと違うような意味で感じ始める。多分その交流っていうのも一さんの縛りでは生まれてくるんじゃないかなと思うんですよ。

一:なんか、独特ですよ。僕もなんか、女性を縛る時とかってほとんど受け身なんですよ。縛られたいって言う人を縛ってあげるんです。彼女(七菜乃)、最初は別に縛られたくて縛られてるんじゃない…けど、やっぱり違うんですよ。やっぱり縛られたいと思っている人が来るんですよ。
そのとき、縛っている中で彼女を見つけてあげなきゃいけないんですよ。

相:ちょっと戸惑ったりとかもあったりして手探りでっていう形ですね。

一:そうですね。見つけてあげるには、なんかその扉っていうか条件ですよね。彼女的にこうじゃなきゃいけないとか、ああじゃないといけないとか、そうしないとこの扉が開かないのもあったりして、そういうのを考えて導き出しているつもりではあるんですけど…彼女自体もヒントは出してくれてたりはしますよね。信号を出しているというか…

相:やはり、完全に一さんは受信機なわけですよね。ただ、受信機に徹しつつも自分からも何かしていかないといけないということもあったりして、より共同作業っていうんですかね?

一:はい、ですね。共同作業ですね。

相:面白いですよね。ちょっと違う感じになってくるんですかね?

一:縛られたいって思っているというのが、元々無かったわけじゃないですか、七菜乃ちゃんの場合。だからやっぱり、受信機としては向こう出してる光は少ないワケですよ。けど、それを探んなきゃいけないというのと、縛るということに対して、必要性、それを彼女と縛ってる間に導き出さなきゃいけないし、そうじゃないと何の意味も無い行為になってしまうし。
やっぱり意味のある行為にして、「ああ、自分は縛ってた、彼女に対してプラスになった」っていう風にしないといけないので、逆になんか普通の女の子を縛るより、相当面白いと思うんですよね。

相:一さんがもしも彼女が出してる、ちっちゃい信号をみたいなのを見つけられなかったら…。

一:見つけられない時もありますよ、結構。

相:もう意味無くなっちゃうってことですもんね。

一:そうですね。たまたま僕は見つけられただけだと思うんですけど。それがなんか縁だったのかなって。

相:そうですよね。確かに、それが見つけられなかったら、やっぱり一さんの方のモチベーションっていうのもなくなるだろうし、探すっていうことに必死になりますよね。

一:僕自体が昔、最初に縛った時とかに、うん、やっぱり七菜乃ちゃんに魅力を感じたんで、普通の子よりは探す努力というか、興味あるから探したんだと思うんですよね。

【今後の展望】

相:では、個展であったり、展示であったり、写真集であったりといった今後のご予定は?

一:多分、来年台湾でやりますね。REDって言うシリーズ。
後はちょうど進んではいるんですけど、来年ロンドンでやる予定ではありますね。今は会場を探してもらっているんですけど、まあ会場が見つかって、海外は写真集が出せたら、それと併せてという感じにしようかなって。

相:それは写真展? それともパフォーマンス?

一:写真展です。
台湾の方はほぼ確定ですね。日程も決めてって感じなんで。

相:大体は今回のを持って行く感じですか?

一:そうですね、ちょうど額にも入ってるし、もう楽だなっていうのもあって。

相:このREDのシリーズが写真集になるという計画はあるんですか?

仲田:台湾の出版社とそういう話は進んでますね。

一:台湾では販売しようかと思ってますね。日本でもやりたいといえばやりたいんですけどね。

仲:変な話、台湾で制作したのを逆輸入みたいな形で一部。

相:洋書みたいな形でね。あと、REDのシリーズで、血と絆ってコンセプトで出して、このシリーズを作ったじゃないですか。それ以降にテーマを決めてっていうのは今の所はないんですか? 

一:実はこのREDっていうシリーズは、僕はもう辞めちゃおうかなって思ったとこもあったんです。僕自体が、これをずっと続けて行くことによって、新しい物を見つけられなくなるんじゃないかって思ってたんですけど、杉浦則夫先生がたまたま見に来たことがあって…。
現場の時、純粋に思ったことをバンバン言っちゃう方なんであの人、「これ鬼のこ君止めるって言ってたけど、全然改善の余地あるぞ。全然終わりじゃないし、多分続きはあるはずだから、こういうのは一個の形になってるから、ずっと続けて行くべきだ」と。一個のコンテンツは終わりじゃないっていう話をされて、ああそういうものなのかなって。
僕もやっぱ杉浦先生にしか見えてない世界があってその中で判断されてたと思うんで、やっぱりあるんだろうなって思って、またなんかねちょっと作り始めて、まだやろうかなと思ってますけど。

相:テーマとしては独自だと思うんですよね。さっきも言ったけども、お母さんの話があって、臍の緒っていうようなイメージを縄に重ねつつ、さらに拡げて、もう絆全体。臍の緒だけじゃなくて、絆全体っていうのに拡げて、そこにさらに赤というのを被せて、血のイメージも重なってきて、良いテーマだと思うんで、なんか続けていくというのは、私もいいんじゃないかなって思うんですよね。

仲:僕も見たいですね、この先どうなっていくのか。

一:もうちょっとやってみようかなとは思ってますね。

相:テーマ自体がすごく、悪い意味じゃなくて大きいと思うし、多分一さんの人生の中でも重要なテーマだと思うんで、やっぱり追求していくっていうのは意味があるのかなっていう風には客観的には思いますけどね。

一:まあ、年代によってまた変わってくるかもしれませんしね。

相:そうですよね。年齢が変わってくると。

一:次にやろうかなって思ってるのが、僕自体が縛りとして、これホワイトレーベルのREDって作品なんでね。レーベルが三つあって、ホワイトレーベルとグリーンレーベルとブラックレーベルとあるんですけど、グリーンの方はサイバーロープ使って、光ったりとか、未来的なクラブシーンでよくやるあれなんですけど、ブラックレーベルっていうのは例えば古典緊縛だったりとか、普段日陰にあるようなものっていう縛りをやっぱり、そこにも僕、凄く興味があって、凄く好きなんで、やっぱりブラックレーベルの方でやりたいなとは思ってますね。
やっぱりブラックレーベルをやることによって、(こっち)のホワイトの方も出てくるんですよね。杉浦先生とこで教わった事とかは凄くこっちの方で役に立ってるし、例えば僕ね、色んな物で縛るんですね。色んな物で縛るし、物をも縛るんです、それが例えば人間だったりとか、物だったりとか、なんか自然な物だったりするし、縛る物だったら、麻縄だったり、綿ロープだったり、リボンだったり、ごく普通の縛り師が使ってない物まで使って、色んな物で縛ってるんですね、もう決めずに。やっぱし麻ってすごくいいんですよ。だけど、麻しか使ってない人って、多分麻の事、分からないんですよね。

相:ああ、他と比べられないってこと?

一:はい、綿ロープもね、いいんですよ。綿ロープってテンションちゃんと合わせなくてもフィットしてくれるんで、すごく心地良いんですよね。それで麻縄は宿るというか、眺めというか、縛られるというか、禁忌的なものを感じたりもするし、やっぱり色んなものでね、人を縛ったり、物を縛ったりとかする時に、なぜ人は美しいのかとか、物でも人と同様に縛れば美しいし、人でも物のように縛れば、違う美しさが出てくるしとか、色んなことが見えてくる。

相:色んな実験することによって、良さというものが際だってくる…、分かってくるんですね。

一:そうです、そうです。
だから今後は、僕も古典的な物とアート的な物と、やっぱりずっとやっていきたいというところがありますね。色んな縛り方をする事によって、またそれだけやってる人には見えない物というのが見えてきますし。

相:そうですよね、古典の縛りの視点っていうのを、一さんが持つことによって、こういうアート的な作品の方も、その視点が入るからまた別の見方ができるし、良さも分かるわけですよね。

一:だから、次は僕、多分ブラックレーベルのをやると思いますね。

相:ちょっとそっち側に比重を置いてやっていこうか、と。

一:そうですね。次やりたいなと思ってるのが、僕アラーキー(荒木経惟)がすごい好きなところがあって。

相:ああ、なるほどね。すごい方ですものね。

一:ビジュアル的な部分で凄くアート的なところもあるし、女を花と見立てて縛ってたりするんですよね。花がよく出てたりしてね。なんか僕もこっそり桜の木で縛ったことがあって、やっぱすごく綺麗だったんですよね。
花がある時に女性ってそういう気持ちになるっていうか、その花に似たような気持ちになるような気がしたので、そういう情景とかそういう所でやっぱ縛りたいなと思って。
なんかちょっと面白みというか、洒落が利いてた方がいいと思うんで、花札にあるような情景になっている季節のやつがあるじゃないですか。牡丹だったりとか、萩だったとか、梅だったり、松だったり、色々と。それで一通り縛っていこうかなっていう。

相:一さんは、本当に綺麗に綺麗にって意識が強いですね。

一:ホンマですか?

相:なんかやっぱり昔から、そういう神経質な所とかありました?

一:どうなんですかね? 僕、どうでも良いところはどうでもいいんですけど。ちゃんとしてる所は本当ちゃんとしたいところが色々あって、潔癖な所はありますね。

相:なんか細やかなんですよね。ロープワークなんかにしても、構成にしても、凄く細やかな所を感じるんですよね。そこがなんか…

一:まめな所があるんかな?

相:そうそう、もの凄く気にしてるのかなっていうのが、作品を見ると分かってくるというか…強いこだわりというか…

一:だけど、僕もなんかね、また杉浦先生の話なんですけど、やっぱ作家はなんか三つのオリジナリティを持たなきゃ駄目だって言って、写真を表現する人も、写真の撮り方は最低三つは持てっていう風に言われてるらしいんですよね。
まあ、僕も三つ持とうと思いながらやってますけど。まあ、だけどそれに対してやっぱしオリジナリティがなきゃ、三つただ単にそういう撮り方が出来るだけ、縛り方が出来るだけじゃ駄目で、そこに自分だけがやってるっていうのがなきゃ駄目だから。

相:そうですよね。だから三つがやっぱりあっても、その三つの繋がりっていうのもね。やっぱりないとっていう、凄く難しい所なんでしょうね。
あと、三つということでいうと、三つのレーベルがあるじゃないですか、将来的にはじめさんが65歳とかになったら、一個になったりして。

一:一個になったりしてね。

相:混ざって。それは分からないですけど、でもありうることですよね。

一:でも、一個になって欲しいですよね。

相:共通してるところってあると思うんで。

一:はい、もう本当にそうだと思いましたね。やっぱ一個になって、一つのね、僕はやっぱりそのブラックレーベルっていうものから派生している人間だったんで、それを出した時に拒絶されたっていうのがあって、やっぱそこから、ブラックを知ってもらいたい為に、あえてレーベル別けして、ホワイトから見せていくっていう風にしてるんですよね。
だから、そこで最終的に、全部やっぱホワイトだと思って欲しいし、全部ブラックだとも思って欲しいし、それは自分の目標ではありますね。相馬さんに言われた通り、そういうのは感じますよね。

相:なんかね、一個になるようにというような欲望も多分あるんだろうなっていうのは思いますよね、見てると。


【鬼のこ版・緊縛教則本】

仲田:これからなんですけど、きのこさんと共同出資で、縛りの教本のようなものを出していきたいなと考えております。仮のタイトルが「近代緊縛」となってまして。きのこさんのそういう縛りの技術的なところから、できればシリーズで出していければと。

はじめ:そうですね。自分自体が「一縄会」という縛りの会、活動がありまして。それが毎月2回、第二と第四の火曜日の時に、講習会をやってます。
で、第三の火曜日にサロンという縛りたい人、縛られた人が来て縛りまくるっていう会があって、そこそこに深く関連を持っている人が、今一線で頑張っている方もいっぱいいたりするんですよね。例えば蓬莱かすみさんだったりとか、向こうの(シシワカ)さんだったりとか、あとは(オトナワ)さんもそうだったし、ちょいちょい色々教えてもらって。
多分、都内で人は一番多く来てると思います。毎回、新しく入って来る人で十五人か二十人くらい、外国人が多いんですけど、受けに来て、そのまま全部で三、四十人くらいずっといる状態でやってます。
そこで、やっぱり教材がなかったので、(仲田)さんのところで一緒に作ってもらえるって話で、教室と連動したような感じになるとは思うんですけど、やっぱり映像とか写真にね、本で学んでも、例えばテンションだったりとか、その人の癖だったりっていうのは治らないし、留め方の力の入れ具合とか、例えば相手との接し方もそうですし、いくら縛れても、縛らしてくれなかったら縛れないワケなんで、そんなんじゃ駄目だから。
縄の扱い方だったりとか、そういうのは教室で教わって、縛る形とか手順とか「これは駄目だよ、ああだよ」っていう本とか映像で伝わる部分では、最大限自分の持ってる事は伝えたいんです。

相馬:教室と連動するような形で出来たらなということですね。

はじめ:そうですね。

相馬:その教則本っていうのは基本的には、はじめさんの今までの縛りの考え方とかも入って来ると思うんですけど、それもやっぱり最初の話に戻っちゃうと、根本になるのは絆をどうやって…ってなってくるんですかね?

はじめ:そうですね。僕やっぱそういうのありますね。僕も昔ね、教わった人に、色んな人に教わってきたんですけど、自分が共感した部分だけをさらってるワケなんですよ。「ああ、これは共感出来ないわ」っていうのは聞いてないですし。
さらってる部分で思い出したのが、縄をちょっと踏んだ時に、無茶苦茶怒られたんですよね。それっていうのは「繋がってる繋がりなワケで、それを蔑ろにしてるわけで、あと相手の肌に触れる物なわけで、それを容易に足の裏で踏めるっていうのはちょっとお前どうかしてると思うで」っていう。
ああ、思慮が浅かったと。やっぱりそういうね、繋がりという意味もね、やっぱ教えたりとかしたいですよね。

相馬:そうですよね。確かに繋げる物であるわけだし、へその緒とかというのも、もの凄く大事な物じゃないですか。そういうのをこめるわけだから、その縄というのを、なんというか、礼儀作法でただ踏んじゃ駄目とかじゃなくて、そのくらい思いを込めてやってもらいたいっていうのがあるんですね。

はじめ:そういうことですよね。
そういうことも教えるっていうことの方に入ってますからね。
まあ、他にはないDVDにはしたいなっと思ってますけどね。
あとはなんか深い所の話しましたけど、僕も、そんな難しい事も考えつつも、軽い所もあるんで、なんかねポップなのが好きなんですよね。可愛いっていうのもやっぱり好きだし、可愛いって日本の文化だと思うんですよね。ポップな物っていうか、今コスプレとか凄く流行ってて、コスプレイヤーとかが、やっぱり縛ってたりするんですけど、コスプレってめちゃくちゃクオリティ高いじゃないですか、今日本でやってるのって。
だけど、縛りって見てても、ああ、凄くクオリティ低いなって。

仲田:もっと可愛く縛れるのにとか…

はじめ:うん、っていうのがあって、やっぱりそういう部分も教則本で簡単にね、綿ロープでちゃちゃっと縛って、「ああ、こんな可愛く縛れるんだ」とか「あ、撮影で使えるな」っていうのも、そのDVDの中に含めてやりたいかなって思ってますけどね。

相馬:あと、はじめさん特有のこまやかさというものも伝えられたらいいですね。

はじめ:そうですね、なんか日本人に特有なものですよね。

相馬:なんていうのかな、あやとり的だったり、手芸的だったりって、ちょっと女性的ですけど、これってやっぱり日本人が大切にするものだと思うんですよね。で、縛ったりするっていう時に、そういうのって日本人だったら含めてもいいじゃないですかね。そういうのを教則本で出せれば、よいんじゃないかとも思うんですけどね。

はじめ:まあ、なんか楽しみです。まだ撮ってないんで。そうしようかなって体で、出来上がり全然違ってたらすいませんって感じで。

東京スポーツ新聞

2011年5月〜2012年10月「一鬼のこの緊縛ワールド」連載

2015年10月7日より、毎週水曜日「進化版 一鬼のこの緊縛ワールド」連載開始